使用皮革の変更と定番製品の見直しのお知らせ
大変ご無沙汰しております。
最後の投稿から丸二年もブログを更新しておらず、またご注文をお受けできない状態が続いていたりと、当サイトにお越し頂いた皆様にはご心配とご迷惑をお掛けしました。
諸事情ありましてしばらくの間革製品の製作から離れておりましたが、気持ちを新たに活動を再開することにいたしまして、現在はwebサイトの改修作業と試作品の製作に取り組んでおります。
そして製作活動を再開するにあたりまして、使用皮革の変更と定番製品の見直しを行うことにいたしました。
突然のお知らせとなってしまい、大変申し訳ありません。
使用皮革の変更についてですが、これまで日本製やイタリア製の植物タンニン鞣し牛革を使用してきましたが、方向性を変え、ドイツ製のクロム鞣し牛革を使用することにしました。
具体的には「Waprolux / ワープロラックス」という革です。
このワープロラックスは、ドイツのタンナーであるワインハイム社(Weinheimer Leder GmbH)が製造する高品質なカーフレザーで、スイス・アルプス地方の牛皮を原皮に、カールフロイデンベルグ時代から続く伝統的なクロム鞣しの技術により作られます。
主な特徴として、クロム鞣し後に植物タンニンで再鞣しを行うことにより、とてもソフトな感触でありながらも適度なコシを持つ革に仕上がっています。
また革の表面には型押し加工が施されており、傷が付きにくく水にも強い素材となっています。その他、顔料を使用した染色により、発色が良く色落ちしにくいという特徴も備えています。
これらの特徴から、これまで当工房で取り扱ってきた革とは対照的な性質を持つ素材となりますので、銀面の表情やエイジングによる色の変化を楽しむといった、所謂「革らしさ」という視点からしますと、面白味に欠ける素材になるかもしれません。
しかしながら、傷や汚れを気にせず日常生活の中で気兼ねなく使える点や、メンテナンス性に優れている点。また製品の個体差を抑えることができる点や、完成時の状態を長く保てる点など、「変化しにくい革」だからこそ得られるメリットも十分にあるのではないかと考えています。
革の色展開につきましては現在ブラック・キャメル・トープの3種類となっていまして、今後の状況により更に数種類追加することも検討しています。
そして使用皮革の変更に伴いまして、定番製品のラインナップも一から見直すことにいたしました。
こちらの変更につきましても、これまでご注文を頂いたお客様や、ご注文を検討されていたお客様には急なお知らせとなってしまい本当に申し訳ありません。
ラインナップを見直す理由としましては、革の特性の違いからこれまでの仕立て方や技法では製作が困難なパーツや綺麗に仕上がらない工程がありまして、現状では各製品を完全に再現することが出来なくなってしまったためです。
今後の方針としましては、先ずは新しい素材の特徴を生かした製品づくりを進めていき、技術的な課題を解決できるようになりましたら、これまでの様な貼り合わせパーツを多用する小物類も製作していきたいと考えています。
ちなみにですが、webサイトのトップイメージにはワープロラックス・キャメルで製作しましたミニポーチの画像を使用しています。
このミニポーチは2017年8月のブログ掲載「なんでもポケット」をベースに試作したもので、ワープロラックスのソフトな質感を感じられるよう、元厚のまま内縫いで仕立てています。
※ 特徴的な馬蹄型のバネホックカバーは「風琴マチ名刺入れ/ボタン留め」にも採用していたもので、デザイン面もありますが、開け留めのし易さやバネホック周りの堅牢性の向上といった役割も果たしています。
今後はこの様な一枚革での製品も増やしていきたいと考えていますし、小物だけでなく、大きめの物も・・・など色々と考えを巡らせております。
製品としてご紹介できるようになるにはもう少しお時間を頂くかと思いますので、何卒ご容赦くださいますようお願いいたします。